否唯なしに。

否唯なしに。

否唯なしに。

主旋律と対旋律の邂逅

 一般的な音楽は、おおよそメロディーとベースラインが確立された時点で成立する。しかしながらやはり、成立するとはいえどメロディーとベースラインだけでは味気ない。煌びやかな飾りや洒落た裏メロディー、そしてベースラインを併走するカッコいいドラムの振動があってこそ、それは人の耳を満足させる素晴らしい代物に成り代わるというものである。

 これらの曲を構成する様々な要素の中で、僕は堪らなく、裏メロディーというやつが好きだ。それぞれの曲を構成する要素達は三者三様の物語を持ち合わせていて、いうならばそれは「メロディーと彼らの物語」だ。そうして、彼らが曲の進行と共にメロディーと紡いでいく物語を想像していくと、一際、人間味溢れる動きをする要素がいる。それが裏メロディー。またの名を対旋律と言う。

 メロディー、もとい主旋律と時に交わり、時に距離を置く対旋律の物語に焦点を絞ってその曲を聴くと本当にそれらが愛おしく感じられる。Aメロで突如として出会い、Bメロの入りで仲違いして、でも少しずつ寄り添いあって、サビ前で同じ時間を共有する。そしてサビではこれまでの二人の生き様をあらんかぎり一杯に放出して、それはそれは素晴らしい「曲」を紡いでくれる。

 サビが煌びやかでとても良い事は言わずもがなであるが、聴き入りたいポイントは、否、悦に入るべきは、個人的にその直前、即ちサビ前だと思う。それまで適度に絡みながらも各々の道を歩んできた彼らが、まったく同じ瞬間を共有して、サビという集大成に共に向かっていくその様は、まさに胸熱、感動なしでは見られない(聴けない)。まったく同じ旋律を二つのそれを構成していた全てが織りなす、その厚みが耳を揺らす感覚は、どの曲を聴いても決まって素晴らしいと思う。

 

 主旋律と対旋律の邂逅。音楽を嗜む上で重要なエッセンスの壱である事は、疑う余地が無いだろう。

 

おわり。